連載:上田秀人氏著「表御番医師診療碌」❶切開

上田秀人氏著「表御番医師診療碌」❶切開を読む

本書は2025年2月が初版、昨年第13巻「不治」で終了している。主人公は矢切良衛。5代将軍徳川綱吉治世の時代、表御番医師として江戸城中で診療に努めている。医師としての上席には最高峰の奥医師、次席の寄合医師があった。彼はオランダ流医学を修めた外科医(外道)で、我流ではあるが剣の道にも通じていた。要約すれば外科医兼剣士なのだ。

主たる登場人物は良衛の妻弥須子。幕府典薬頭今大路家の娘である。今大路家当主が良衛の評判を聞き、側室が産んだ娘を押し込んだのだ。
奈須玄竹は寄合医師。彼の妻と良衛の妻は姉妹にあたるので良衛とは義理の兄弟だ。
続いて松平対馬守。大目付で