龍王峡駅に翡翠の声を聞く



 囀りや指にからませ抜く仕付  鈴木真砂女 夏帯

 寿司屋にて鯨のさえずり注文す  アロマ

 ひらがなをくづせしやうに囀れり  藤田湘子 神楽

 薬師寺の塔の囀いま聞かな  後藤夜半

 折鶴の嘴さへづりに向けて置く  鎌倉佐弓 潤

 我が家にて囀りの朝賑わしく  アロマ

 不如帰鳴くを初めて聞けり  アロマ

 木の葉もて拭く手のチョークさへづれり  木下夕爾

 大空のすこしを使ひ囀れり  仙田洋子

 富士隠す森の深さに囀れる  稲畑汀子 春光

  尾の力抜いて頬白囀れり  堀口星眠 樹の雫

 乱れなき囀よ飢透きとほり  佐藤鬼房