忘れじのあの人ーー名前以外、何も教えあわずに別れてしまった自分への嫌悪と悔恨ーー白紙のカンバスに次々と…

「まあ、遠いところから
ようこそ・・・

さ、どうぞお上がりください」

玄関のさきに広がっていたのは
20帖をこえるほど広々とした居間

その中央にグランドピアノがおかれている

来訪者の登場に心躍らせているような中型犬
ラブラドール・レトリーバーは和彦を見て

尻尾をふってはしゃぎまわっていたが

「これ、ナナ、おすわり!」 との声に

さっとすわりこんだ

ピアノのすぐとなりに。。。


気がつくと、テーブルに香ばしい湯気の
たちのぼる紅茶がだされている

「これ、庭でとれたハーブの紅茶です
どうぞ召し上がれ・・・」

「これ、ナナ!
しょうのない