ルーブルとVR(バーチャルリアリティー)

(作家・一色さゆり「モナリザの裏側」 月刊「小説新潮」 ‘21年9月号 より)

私の母は、ある日病気に気づき病院に行くと即入院となった。私は見舞いに通う度、私にとても優しかった母との幸せな日々を思い出し、感謝の気持ちをそっと表わしていた。そんな心が通じたのか母は、一人で院内を歩ける程に回復したある日のこと、「退院したら二人でルーブル美術館にいきたいね、見たい絵があるの」と言う。「モナリザ ? 」と私は聞き返したが・・母は微笑みながら首を横に振るだけ。

それから何日か過ぎ、母がいきなり「最近流行の、”VR遺言”に申し込んでおいたわ」と言う。担当医からは