無月(むげつ)には物想うこと多くなり



 クレヨンの月が匂ひて無月(むげつ)かな  田尻すみを

  パンちぎる無月の海と知りながら  岡田史乃

 人の妻無月の蕎麦を打ちにけり  月舟俳句集 原月舟

 和紙の文うすきがとどく無月かな  上野さち子

 浅草の空が明るき無月かな  高橋春灯

 ガラス越し雨がとびつく無月かな  阿波野青畝

 無月なり仄かな闇に抱かれて アロマ

 ほとけ見て心足りたる無月かな  角川春樹

 蟇出でて無月の庭に影曳ける  大森三保子

 如意輪寺うすうすとある無月かな  牧野春駒

 無月なり夜学子の席とびとびに  小野恵美子

 一駅分地下街歩く無月