このまま帰るのは勿体ないような天気だった。花屋だ。待て待て。現金がない。カードなど使えない小さなお店だ。一度帰宅して現金を持った。
花屋のガラス戸を開けると、薄黄色い小さな花が目に飛び込んで来た。
「マンサク!私、大好きなんです」
「いえ、ええっとなんでしたっけ?」
「サンシュユ?」
「サンシュ!」
「山茱萸 (さんしゅゆ)」、秋にはグミのような赤い実を付けるというが、花はマンサクによく似ている。
私の好きな花は故郷新潟に咲いていた花が最優先。雪解けの茶色い山肌は次々色を変えるが、真っ先にマンサクが薄黄色に染める。コブシが咲くと白くなる。
「こ