池波正太郎の銀座日記より その5

 池波正太郎は、長年に亘って直木賞、吉川英治文学賞の審査員をしています。

審査するからには、それぞれの候補作品数編に目を通さなければなりません。

そこで、お気に入りの天ぷら屋が入っている「山の上ホテル」で、缶詰めになって読むのです。

×月×日

昨夜、我が家にいる4匹の猫のうち、もっとも年をとっている女猫のメイコが、長らく病気で寝ていたが、珍しく私の部屋に入ってくる。

しかし、もう歩けない。歩こうとしては倒れ、倒れては必死になり、起き上がろうとするさまを見ていると、あわれになる。

何処へ行きたいのか、それがわかれば、手をかしてやるのだが、わから