「ここが好き」と母がいう。

「今まで住んでいたところでどこが一番良かった?好きだったか?」と母に聞いてみると、
「ここ」と答えた。

お嬢様として育った満州、武術専門学生(なぎなた)であったときの京都、父の仕事の関係で行った東京(九段、深川)、宮崎、大分、福岡ではなく・・・、「ここ」であった。
ここで父を亡くしている、自分も不自由な体になり「早く死にたい」と愚痴をこぼしている。でも、「ここが一番いい」と母はいう。母は、幸せだったんだ。そのことをちゃんと受け入れているんだ、と思って嬉しかった。

日課である散歩に出かけた。少し歩くと川にでる。油山のふもとから流れる樋井川である。澄んで