日常以上旅未満 ー久喜・正法院のご朱印と阿坊列車 ー

愛する内田百閒先生は、自分では勿論そう思っていないがひと様がそう言うので調子を合わせて「阿坊列車」と名付けて「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う」と出かけている。用事がなく出かけるのだから3等や2等(今でいえば普通車)には乗りたくない。1等でなければならない、但し帰りは「家に帰る」という目的があるから3等でいいと言うのだ。大阪へ着いたからと言ってどこを見るわけでもない。宿に着いて酒を呑んで寝て翌朝帰りの列車に乗る。出かける以上予算を立てるが「予算したお金をつかえば脚が出るにきまったものだが、脚が長過ぎる。しかし止むを得ない。」