古典の中の易 宇治拾遺物語

宇治拾遺物語 1-8 易の占(うらな)ひして金取り出(いだ)す事

旅人の宿求めけるに、大きやかなる家の、あばれたるがありけるによりて、「ここに宿し給ひてんや」といへば、女声にて「よき事、宿り給へ」といへば、皆おりゐにけり。屋大きなれども人のありげもなし。ただ女一人ぞあるけはひしける。

かくて夜明けにければ、物食ひしたためて出でて行くを、この家にある女出で来て、「え出でおはせじ。とどまり給へ」といふ。「こはいかに」と問へば、「おのれが黄金(こがね)千両を負ひ給へり。その弁(わきま)へしてこそ出で給はめ」といへば、この旅人従者(ずんざ)ども笑ひて