辻々に春めく空気漲って



 メレンゲのふはり泡立つ遅日かな 奥田茶々

 宙に舞ふスケートボード遅日かな 岩月優美子

 法隆寺よぎり遅日の郵便夫  安養寺美人

 この庭の遅日の石のいつまでも   高浜虚子

 ビルを出て遅日の街にまぎれ入る  井本農一

 戸を開けて子を呼んでいる遅日かな  千葉皓史

 勝手口開ければ遅日の日差しかな  アロマ

 遅き日の機嫌直しの麩煎餅  飯島晴子

 墨買うて仏に逢うて奈良遅日  浅沼 艸月

 天壇の遅日の空の瑠璃瓦  福井圭児

 対岸は殊に平穏暮遅き  岡本まち子

 夕長き