父にとって

父にとってひな人形を飾るとはどういうことだったのだろう。

特に趣味もなく、
仕事が終われば職場でお風呂に入って
真っ直ぐ帰ってくる。
晩酌するわけでもなく、
家族に何か語るわけでもなく、
お相撲を熱心にテレビで観て
山に山菜採りにいくくらい。

そんな父が、おひなさまは
一人黙々と
それはそれは丁寧に飾っていた。
(さわると制された)
その横顔が思い出される。

小ぶりな段飾りではあったが、
ご近所では段飾りは珍しかった。
姉が生まれた時に買ったらしい。
困ることはなかった(だろう)けど
決して裕福とは言えないわ