三月も半ばを過ぎるとそちこちに春があふれている。
朝、カーテンを開けると目が弄ばれるような陽射しが
一斉に部屋になだれこんで来る。
哀しくても辛くても春はやってくる。
秘めた時間の祈りを、あふれる色と香りにして新しい
命の息吹をそっと手渡してくれる。
三月の初め、阪急線沿いの岡本梅林に梅を観に行った。
ここの梅林はそれほど広くはないが、かつて亡き夫と
何度か訪れた思い出の場所である。
「もう、今年でここに来るのもお終いだろうな!」
毎年のように夫はつぶやいていた。
「ううん、そんなことはないよ。来年もこようね!」