やがて母の日。

91歳の母は衰弱していた。
私は何度も気持ちを整理する。

生老病死と愛別離苦、自らの胸に言い聞かせ何か安心を
得ようともがいていた。

しかし、一方でそんなことをすれば杞憂が現実になる
のではとの葛藤もあり、じめじめとした逡巡もしていた。

こんなはずではなかった。
私は母に優しい言葉をもらった記憶がない。
無論、私も母への愛情なんて微塵も感じていなかった。

子供のころ、母の田舎へ行ったことがある。
木の板が浮いた、不思議な風呂があった。
それを五右衛門風呂と呼ぶのを知ったのは後のこと。

「あの板はなに?」