ふるさと交響曲 



ぼくは故郷が嫌いだった
金沢の古い街並
憂鬱な思い出が忘れようとさせた
父母は不器用にしか生きられなかった
寡黙な父、悩む母、時が流れ
悲しい切ない生活の地となって
ぼくの心に残った

両親が亡くなって一度行ってみた
日が落ちる頃、紺碧に色づいた古い街並
野町広小路のバス停から坂を下り
西茶屋街へ一軒のくぐり戸を開けた
子どもの頃かいだかびくさい臭いが
風の流れに乗って漂って来た
臭いが脳を刺激して音へと繋がった
芸子さんがシャラリと歩く下駄の音
夕暮れの茶屋街に流れる三味線の音
小太鼓のトンツクテン
ぼくの沸