こらえてつかわそう…

「いよいよ戦か…」

真田昌幸は虚空をにらみ、草履をもて、と一声いって
虎口に向かった。

虎口(城いちばんの出入口)こそ上田築城のさい、とり
わけ昌幸が叡智をそそいだ場所であった。

一望して昌幸は、一切を決めた。

"景勝に会おう…"

近侍のものに源二郎(幸村)を呼べ、と告げ瞑目した。

やがて幸村があらわれた。

「源二郎。ワシは上杉へいくぞ」

「はっ」

「おぬしといく」

「こころえました。いま、したくを…」

幸村が立ち去ろうとした、せつな、

「おぬし、わかっておるのか?」

「わ