昔の話です。
高校を卒業した私は苦労して合格した大学にも出席せず、
アルバイトもせず、ただ自室でごろごろとしていました。
社会の入り口で戸惑っている私に比べ、友達は、ゆうゆう
と、我が道を進んでいるように見え、鬱屈もしました。
うらやみとやっかみが混然とした毎日でもあったのです。
ある朝「これで一生もののスーツを作れ」と父が唐突
に大金を差し出しました。
どこに行くにも学校の制服姿の私を見かねたのか、何か
別の目論見があったのか知る由もありません。
翌日 私は おずおずと一流テーラーのドアを押しました。
「お