野花咲き風の揺蕩う秋の午後



 月山を遠く秋野の道しるべ  河合笑子

 秋郊といふ武蔵野に大和路に  稲畑廣太郎

 秋の草原列車は走る鉾田まで  アロマ

 秋野より土産の花材一握り  菊地英雄

 子が爺を追ひ麦秋の野を駈ける  遠藤泉

 秋の野をかきわけ走るローカル線 山口地翠

 旅行けば宿の正面阿蘇五岳  アロマ

 秋の野に群れ咲く小花うす紫 水谷直子

 深秋の野に天平の石ひとつ   落合絹代

 秋の野として飛鳥野は静まれり  稲岡長

 秋の野や素手にて食らふ握り飯  堀一郎

 水底のやうな日の差す秋野かな