封印された愛  Ⅱ

半世紀は、短いようでいて、実は人生の充実期だったことを思えば長いのだ。
Sの訃報は様々のことを思い起こすきっかけになった。

専門学校時代に知り合い、激しい学生運動のさなか、彼からは、都会の知識を学んだ。その知識の差は大きかったと思う。
いつだったか、もう会いたくて、彼の下宿に行き、鍵のかかっていない部屋に入り
「まことの愛に恐れはない」(ヨハネの手紙 4)と書いて帰ってきたことがある。

今振り返えると、最大の愛の告白だったが、彼からの反応はなかった。きっと戸惑ったに違いない。

私は卒業すると、日曜日が休みにならない勤務だったので、