抱返り渓谷で見た紅葉の三つの原色

 秋田県の角館からJR田沢湖線に乗って二駅目の神代(じんだい)駅で降り、ここから歩くと3~40分で「抱返り(だきかえり)渓谷」に着く。ここはサクラやカエデ、ブナやモミジに囲まれた新緑と紅葉の名所である。田沢湖の水が流れこみ角館へ続く玉川の中流の、全長10㌔程の渓谷である。かつては狭い山道でお互い抱き合わないとすれ違えないほど険しかったのがその名の由来である。
 20年前の11月ここを訪ね、朝8時過ぎ、危な気ないハイキングコースを歩き始めた。渓谷は深く、流れは緩やかである。静かな水面に朝日をうけた山の紅葉が逆さに映り、モミジ色が谷間をうめていた。