雪蛍ふわり浮き立ち天界に



 野をゆくに即かず離れず雪螢 藤原明美

 綿虫が束の間夕日呼びし谿  山田弘子

 綿虫飛ぶ三千院の朱雀門 神蔵器

 いつも来る綿虫のころ深大寺   石田波郷

 合掌のさまに捕へて雪螢 田中美幸

 湧水や竹の藪より雪蛍 小林螢二

 狛犬の阿にも吽にも雪螢 塩出眞一

 夕月の匂ふ高さに雪螢 藤岡紫水

 草木染揺るる軒先雪蛍 和田政子

 囲ふ掌に幽かな震へ雪蛍 小澤菜美

 しばらくは日の射す路地や雪螢  那須淳男

 銭湯も本屋も消えて雪蛍 笹村ルル

 伸べる手の先へさきへと雪蛍