ニットの蒼い手袋



 その昔 川越の新富町を歩いていた

 人出が多く お祭りだったのかも

 娘を連れて 遊びに来たのだと思う

 小学生だった娘の服装は覚えている

 お鮨屋の傍を通りかかり

 娘に食べる?と聞くと頷くので じゃあ二つねと言って入る

 娘が注文したのは鮪とイクラ 私は食べるつもりはなかった

 お八つ感覚で二つ食べ終え お店を後にする

 その時の店主の顔を思い出す  中年の職人肌の人

 その後 何処までか行って引き返した

 心地良い晴れた日の出来事

 春だったのか秋だったのか それも定かで