ファンファーレ



 ファンファーレが 鳴り響くように

 素敵な感覚だった  

 ありがとう 心の中でそう呟いた

 火炉が閉まる前 母との最期の対話だったのかもしれない

 お坊様の荘厳な 郷愁溢れる読経は辺りに響き渡った

 五月末日の葬儀は極内々に済ませた

 八月には九十三歳になるという大往生

 半年入院したが 故郷の地で朝な夕なに海を見つつ

 過ごせて良かったと思う

 折りからのコロナ禍で 途中帰省する時

 乗り物はガラ空きだったことも

 外出用にと用意していた 藤色のニットのワンピースを

 纏い花に飾られての旅立ちだった

 ずっと天候に恵ま