短編小説 渚の慕情

以前書いたものを再々々掲載(爆笑)

第一話
男はライターを鳴らし、紫煙を燻らしながら女の事を考えていた。
外は夜来の小雨が木々を濡らしている。
寒かった冬も過ぎ、その木々には芽吹が見られ春到来の予感がしていた。
男は55才。
某メーカーの技術部長の地位にあった。
同期の中では早くにその地位に就き今役員の話が出ている。
専務からは身辺整理をして置くように言われている。
変な噂があれば、足を引っ張られかねないからである。
男に悪い噂話などない。
只、女の事が少し気にはなっていた。
男には家庭があり、言わば不倫関係。
女は知的な女性である。
話せば身を退いて