一番好きな、桜

桜の季節である。桜に込める想いはおそらく人それぞれだと思う。
大学受験を控えて過去問を解いているとき、題材となっている小林秀雄の「様々なる意匠」は何度読み直しても意味が取れなかった。ある人の話で、娘に文意を問われたとき、彼はそれが自分の書いたものとは気づかず奇抜な文章に不平を漏らしたと聞く。
小林秀雄は日本を代表する文芸評論家である。思惟を重んじる人にとっては一時代を築いた文人であり、その影響は、彼の「モオツァルト」によって日本人のモーツァルト好きが始まったとさえ言われていることを鑑みれば文学の世界に止まらない。かく言う私も、若い時代には彼の微細でも間接