春日山懐古 大槻磐渓作
春日山頭 晩霞に鎖さる(とざさる)
驊鰡(かりゅう)嘶き罷んで(いななきやんで)鳴鴉(めいあ)有り
憐れむ君が独り 能州の月を賦して
平安城外の 花を詠ぜざりしを
※訳
ありし日の上杉謙信公の居城、春日山の跡に来てみれば、山一面夕もやに閉ざされて、名馬のいななきも聞こえず、ただものさびしく鴉(からす)が鳴いているだけである。
それにつけても謙信公ほどの英雄が、「越山併せ得たり能州の景」などと、空しく僻地の月のみを愛でるにとどまり、京都に上って天下の統一を果たして、都付近の花を詠むこともなく、生を終えたことはまことに気の毒で