駅の傍にそのバーはあった。 バーの名前は「Hells Door(魔界への扉)」という。
「洋風居酒屋」と、手で書きなぐった古い看板に書いてある。どこが洋風なのかは、誰も分からない。
外から見ると、もう店は崩れかけに見える。それだけ古いのもあるが、手入れが行き届いていないのが一目瞭然なのだ。誰もがその店を通る時、一瞬眉をひそめて通る。違和感を覚えるのだろうか。そのくらい店はある種「超然」としてただ、そこに「ある」。
勇気を持って店の中に入ると、痩せてやつれた70前のマスターが独りでギターを弾いている。さほど上手くもないのに、アンプをガンガン鳴らせてい