中秋の名月  2023-9/29 松島

いにしえの鎌倉時代、比叡山で修行した各宗派の高僧たちが、関東から東北方面へ布教の旅が盛んになっている。時宗の一遍上人、浄土真宗の親鸞、臨済宗や浄土宗など・・・・。代表的な天台宗の円仁を継いだ高僧たち、平安時代の西行でさえ、出家して平泉まで2度も訪ねている。注目されるのは浄土真宗3世・覚如が松島の月を画いた『慕帰絵』を京都で発表したことである。彼は2度も松島を訪ねて、朝まで月を愛でた第一人者である。
以後、伊達政宗、松尾芭蕉も朝まで松島の月を楽しんで、詩に遺している。
西行の詩は、象潟で「松島や雄島が磯も何ならすただ象潟の秋の夜の月」と詠っている。
現代人には、月夜のみが明かるい夜だった生活を思い、特別な日々だったことが実感できていないのである。
和歌をたしなむ歌人には、月を詠むことが最も強いられ、高い教養と社会的身分の高さを示す題材だったのである。
従って、松島には永い間の詩歌が積み重なって、遺されてきた。
デジタル・カメラは、和歌を慕った昔人の想いを手繰り寄せる絶好の機材である。
大きな月が照らす雲間と言い、海に移る月明りこそが、日本の風雅の誠であろう・・。
テレビの画像を上回る「心眼」という人間の目を信じて居たい・・。昨日の
仲秋の名月は、雲にさえぎられた分、松島の風情は増したように感じた。やっぱり月は松島ん限る・・・。

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