天然記念物 奈良・知足院の「ナラノヤエザクラ」

東大寺の塔頭・知足院の裏山にあった一本の「ナラノヤエザクラ」がその原木として、
国の天然記念物に指定されたのは1923年(大正12年)。その原木が倒木で
平成21年に枯れて、その原木の遺伝子を持つ「ナラノヤエザクラ」が平成26年に
奈良県森林センターで育てられて、ここの移植されたのが平成26年(2014)
のことである。この置き去りにされた「ナラノヤエザクラ」も、すでにここに
佇んで10年になる。わたしがこの無住の知足院という塔頭をはじめて訪れたのは
2016年の10月である。うらぶれた廃れた風景のなかに孤高に佇んでいる、
淋しげな桜の木を知ったのは2017年4月だった。それからこの時期にはほぼ
この「ナラノヤエザクラ」に会いに行くようにしている。写真は昨日撮ったものだが、
大きく枝ぶりを高くして、葉の繁りも花の数も目立って凛々しくなってきたものだ。

「奈良」の「八重桜」ではなく、「ナラノヤエザクラ」という固有種の桜で奈良市の
市章になっている。4月の末頃に盛りを見るが、桜の花の咲く最後の時期、新緑が
芽を吹きだした頃に、若い緑のなかに咲き始めは清楚な白いピンクだが、散る頃には
紅色に染まって零れていく。「青丹よし」の奈良の都の桜花である。

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