花冷えの灯ともる路地の小料理店　 西本花音 　花冷えや引けば躾の糸鳴いて　 浅木ノヱ 　花冷えや桜の色の紅淡く　　アロマ 　花冷えやうどんに卵落とし込む　 永田万年青 　花冷ゆる浦に妻恋万葉碑　 亀井福恵 　花冷や旧要塞の切通し 　森清信子 　境内に花冷えの日の写真撮る　　アロマ 　花冷えの野や半眼の磨崖仏 　丸山千穂子 　花冷のまま東京の暮れてをり　 木村享史…

　　　「夏目漱石」の句 　時雨るるや油揚烟る縄簾 　号外の鈴ふり立る時雨哉 　初雪や小路へ入る納豆売 　懇ろに雑炊たくや小夜時雨 　魚河岸や乾鮭洗ふ水の音 　寒月やから掘端のうどん売 　寐て聞くやぺたりぺたりと餅の音 　初冬や竹切る山の鉈の音 　五六寸去年と今年の落葉哉 　法螺の音の何処より来る枯野哉 　杉木立寺を蔵して時雨けり 　したたかに饅頭笠の霰哉 　凩のまがり…