「酒」 父親は下戸だった。 で、酒を飲むようになったのは建設会社に 就職してからだった。 昭和30年、当時建設会社は土建屋と呼ばれて、 ガラの悪さはヤクザも顔負けだった。 最初に配置された建築現場の主任はテーブルに 一升瓶をデンと据え、グビグビ呑みながら、 我々現場技術者に指示を出していた。 とにかく、面白半分に飲まされた。 馬鹿げた話だが、ゲーゲー吐きながら半年も 経つ頃には一人前の酒飲…
「煙草」 両親がキセルを咥えている姿を幼児の頃から 見て育ったので、高校生の頃には隠れて 吸い始めていた。 最初のタバコは父親が戦後の闇市で売っていた アメモク(アメリカ煙草)の中でラクダの イラストが気に入ってくすねたキャメルだった。 しかし、辛いばかりで旨いとは思わなかった。 20歳を過ぎて堂々と吸えるようにはなったが、 貧乏なアルバイト学生としては当時最も安い ゴールデンバットで我慢…