山本周五郎の長編小説に「虚空遍歴」がある。 『あたしがあの方の端唄をはじめて聞いたのは十六の秋であった。逢いにゆくときゃ足袋はいて、――で終わるあの「雪の夜道」である。文句とふしまわしが、毛筋ほどの隙もなくぴったり合ったあの唄を聞いたとき、あたしの軀の中を何かが吹き抜け、全身が透明になるような、不思議な感動に浸された』（新潮文庫（上）冒頭） 中藤中也という旗本の次男坊の中藤沖也が余技として作る端…

外国人が投稿しているらしい日本の古い映画がたくさんある。 ＰＣの小さい画面で見るぶんには、まぁそれなりになんとかなるので戦前のおいそれと見られない貴重なモノクロ邦画を堪能中なのだ♪ 川口松太郎の芸道作品のひとつと言う『鶴八鶴次郎』。 東宝配給：成瀬巳喜男監督 主演：鶴次郎＝長谷川一夫　鶴八＝山田五十鈴 大正時代、新内節の名人＜鶴八鶴次郎＞のコンビが辿る芸の道の物語。 ◆長谷川一夫のいい男っぷ…