「深緑野分」の日記一覧

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海に沈められた書物達

 深緑野分の「空想の海」を読了した。著者はミステリー畑の作家であり、2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作となり、同作を収録した同タイトルの作品で2013年に単行本デビューしている。本書は11篇の短編を収録したノンジャンルの短編集である。  「海」:全ての命が絶えた世界に生き残った私は、あらゆる国の言葉で書かれた様々な本を収納する図書館を見つけた後、手製の船で海に漕ぎ…

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ホローコーストの時代に

 深緑野分の「オーブランの少女」を読了した。著者はミステリー畑の作家であり、2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作となり、同作を収録した本書で2013年に単行本デビューしている。本書は五篇の短編を収録したノンジャンルのミステリーの短編集である。  「オーブランの少女」:フランスの田舎にある、季節の花々が咲き乱れる「オーブランの庭」は、老姉妹が五十年以上も管理してきてい…

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怪物X

 深緑野分の「スタッフロール」を読了した。著者はミステリー畑の作家である。本書は、戦後ハリウッドで活躍した特殊造形師のマチルダ・セジウィックと、現代のロンドンで活躍するアニメーターのヴィヴィアン・メリルという、映画の特殊効果に魅せられた二人の女性クリエイターの、時代を超えた共鳴を描いた作品である。  1946年生まれのマチルダ・セジウィックは、二歳の時に父親の友人でハリウッドの脚本家であるロナル…

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神様と人間のエゴ

 深緑野分の「カミサマはそういない」を読了した。著者はミステリー畑の作家である。本書は、少しダークな雰囲気のミステリーからホラーにわたる、七篇の短編を収録したノンジャンルの短編集である。  「伊藤が消えた」:庭付きの古民家をシェアしていた三人の内、伊藤恭介が仕事を辞めて実家に帰ることになるが、その父親から息子が帰ってこないとの連絡がある。電話を受けた同居人の山上信太は、嫌がらせのために伊藤の財布…

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マジックリアリズムの世界

 深緑野分の「この本を盗む者は」を読了した。著者はミステリー畑の作家である。本書は、古い書庫に収容された膨大な蔵書にかけられた呪いにより引き起こされる事件を描いた、一種のファンタジーである。  本書の主人公で語り手である御倉深冬は、マンガは読むが、読書が嫌いで書物は年に一冊も読まないという女子高生である。書物の稀代の蒐集家であった彼女の曽祖父の御倉嘉市は、住んでいた読長町に御倉館という二階建ての…

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著者別インデックス:国内(深緑野分)

1.オーブランの少女 (2013.10)   https://smcb.jp/diaries/8884306 2.戦場のコックたち (2015.08)   https://smcb.jp/diaries/6940545 3.分かれ道ノストラダムス (2016.09)   https://smcb.jp/diaries/7298193 4.ベルリンは晴れているか (2018.09) …

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分断されたベルリンにて

 深緑野分の「ベルリンは晴れているか」を読了した。著者はミステリー作家である。本書は、第二次大戦直後のドイツを舞台にした、米国の兵員食堂で働くドイツ人少女アウグステ・ニッケルを主人公とした歴史ミステリーである。本書は、殺人事件の起こった現実の時間を描いたストーリーと、アウグステの過去を描いた過去の回想である幕間のストーリーの二つの時間スケールで進行する。  物語の舞台は1945年7月、ナチス・ド…

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空から降って来る恐怖の大王

 深緑野分の「分かれ道ノストラダムス」を読了した。著者はミステリー作家である。本書は、ノストラダムスの大予言で世界が滅亡するとされた1999年7月目前を舞台とした青春ミステリーである。  1999年6月6日、2年前に亡くなったボーイフレンドの基の三回忌に出席した高校一年生の日高あさぎは、基の祖母から彼が書き遺した日記を渡される。基は中学二年生の時に心臓病で急逝したが、その時あさぎは隣町に転居して…

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非日常の中の日常の謎

深緑野分の「戦場のコックたち」を読了した。著者はミステリー作家である。本書は19歳で第二次大戦のヨーロッパ戦線に参戦した米人コック兵の戦場の日々を描いた青春ミステリーであり、2016年第154回直木三十五賞候補作である。  第二次大戦が激化し、アメリカで志願兵を募集した時、「これは君の戦争 これは僕の戦争 みんなの戦争 勝利をつかみ取れ」とのスローガンをルイジアナ州の片田舎で見た主人公で17歳の…