久木綾子『見残しの塔』新宿書房

89歳で作家デビューした著者の第一作。
前回紹介した『禊の塔』はこの人の二作目です。

この作品の副題は「周防国五重塔縁起」。

平家の落武者の裔たちと言われる日向国椎葉村の神主の二男は幼い頃より宮大工を目指し、村を捨て大工の修行に出て最後には周防国五重塔建築に携わる。

一方、新田義貞(源氏朝臣)の流れを汲む若狭新田家二代目の庶子姫は幼い頃、自分を捨てた母親を訪ねて周防国へとやって来る。

物語は二人の出生に至るまでのエピソードから始まる。

合戦のシーンも果たし合いのシーンも無い。
しかし、複雑な人間関係や建築についての詳しい内容を素人に飽きさせない