青山文平 の 「泳ぐ者」 と 出世の道

『泳ぐ者』は前作の『半席』に続き、徒目付の片岡直人が活躍する物語です。前作では子々孫々までの旗本席「永々御目見以上」をめざし、勘定所へ移って「勘定」の職に就きたいと思っていたのを断念し、徒目付の職一筋にと決断しています。

この作家のすごいところは、御家人から旗本になる道、百姓・町人から武家になる道を小説の中に取り込んだことにあります。
江戸幕府はその体制を維持するために、人材登用の道をいろいろと準備していたことにも驚きます。作者は物語の中で「幕府という軍団を維持するには、その行政を危うくしかねないカネの出入りをきっちりする部署と、ヒトのタガをしっかりす