藤井素介(ふじいもとすけ)の「雲さわぐ」 と 賢者の実像

「島原天草の乱」の後、天領となった天草の復興に尽力した幕府代官・鈴木重成を描いています。物語は不穏な動きをする吉利支丹信徒を捕縛する意外な話で始まります。

そんな重成に各地を流浪してきた僧・貧留は「燻し落とされた蚊のように無力になった隠れ吉利支丹に何ができましょう。百姓のいないこの島の荒れ果てた田畑はどうなさるおつもりなのですか」と。

重成は百姓や漁民などの生活状況を見、彼らに本心を聞き出すことに努めます。特に幼い子供たちをじっと見ている。彼らに天草の将来を見ているに違いないのです。

やがて重成は、前の唐津藩主・寺沢博高が幕府に4万2千石(田地とし