嫁と舅。


輿入れ(こしいれ)の一行は、日暮時に城下へと入った。
いたるところに篇火が真昼のように焚かれ、その中を
長い隊列は、東方の小泉口を通り抜けようとしていた。

やがて月姫は輿より降り、侍女房に手を引かれて庭を
通り抜け、途中から館にはいり長い廊下を通って奥へ
と導かれて行った。

昌幸は婚儀の式には出なかったが廊下を渡って行く
月姫を中庭への出口のところに立って眺めた。

月姫はもちろん俯向いて歩いていたので、自分が
昌幸の前を通っていることには気付いていなかった。

昌幸は初めて本多忠勝の娘を見た。
これが、あの本多平ハ郎忠勝の娘かと思うほど彼女
は繊