嘘によってでしか語られぬ真実とは

色川大吉著『歴史家の嘘と夢』朝日新聞社刊を読了。 帯には「夢―それは自由へのかぎりない憧憬、嘘―それは真実への避けがたい方法」とある。
 ?、歴史と人間、?、わだつみの友へ、?、国家幻想のはざまで、?、砂漠の星の下で、の四部からなる。
 《木枯し紋次郎が足早に原野の中を歩いてゆく。遠くに海の光るすすきの原を歩いてゆく。竹の林の中を歩いてゆく。雪山の見える峠の一本路を歩いてゆく。破れた三度傘を眼深にかぶり、暗い表情を浮かべて・・・。》と、この本は始まる。
 大衆の心を捉える人気の所在を《窒息しそうな過密な超管理社会の中での民衆の憤懣と反抗心が、紋次郎のニヒ