(142) 世間(よのなか)は 数なきものか 春花の
散りの乱(まが)ひに 死ぬべきを思へば
巻十七・3963 大伴家持
大意・ 人の世は、まことにはかなく取るに足らぬものという気がします。 こうして春の花が散り乱れているなかに、さびしく命を終えて行く自分のことを思いますと…。
解説・ それは家持が越中の守として赴任した翌747年年の春。まだ妻も居ない館に重い病気を患って,独り寝込んだ時の歌です。この前年に仲の良い実弟の大伴書持(ふみもち)を亡くしており、よほど心にこたえたのでしょう。長歌に続く短歌2首があってこの