信天翁の羽ばたき

七河迦南の「アルバトロスは羽ばたかない」を読了した。本書の主人公は児童養護施設七海学園に勤める保育士北沢春菜で、舞台設定は前作の「七つの海を照らす星」と同じである。本書のストーリーには、大きく二つの流れがある。一つは、七海学園に在籍する子供達が通学する高校の文化祭の日に起こった、校舎屋上からの転落事件の真相を、「わたし」が追う冬の章である。もう一つは、転落事件の起こる前の春から晩秋にかけて、学園で起こった四つの不思議な事件のいわゆる日常の謎を、友人の桂音や児童福祉司の海王の協力を得て、春菜が解き明かすものである。
病弱で困窮した母親が、突然アパートを退去