老いて生きる事  〜老人のつぶやき〜

老人は疲れていた

無理も無い。
もう何十年も必死に走り続けて来たのだ

仕事を退いた時、老人は思った

「これからは自分の為に生きよう」

それからは走るのを止めて
周りの景色を眺めながらゆっくりと歩こうと決めた

だが
老人の体力は最早、若い頃のそれとは違っていた

一歩踏み出す足も
心とは裏腹に思うようには動かない



歩き疲れた老人は
道路脇の切り株に腰を下ろすと
ふと目の前に見つけたタンポポに話しかけた


「歳を取るという事は
 少しづつ
 持っている物を失くしていくと言う事なんだろうか?

 だとしたら
 長生きをする事は辛い事でしか無く