36、ゲーテの恋の遍歴

恋多きゲーテほど、その恋の履歴が明らかな人もいないのではないか。
 恋の最中にも、また恋の終わった後に、それが類稀な詩や戯曲や小説に反映されて傑作が生まれている。

 ゲーテ14歳の時、恋文の代筆や恋文を詩形で作って感歎され、感謝されていた頃、料理店にいた2,3歳年上のグレートヒェンを知った。
 彼女はその後化粧品店に勤めて二人は毎晩のように会っていたが、ヨーゼフ2世の戴冠式の晩、グレートヒェンは彼の額にキスをしてそれきりの別れとなった。
 初恋の喜びと苦しみを味わわせた彼女の名は、『ファウスト』に残された。

 1765年、16歳になったゲーテは父の勧