志川節子の「結び屋おえん  糸を手繰れば」。

おえんは嫁いだ先の深川の味噌問屋・松井屋文治郎からあらぬ不義を理由に離縁された、32歳のこと。日本橋瀬戸物町の芽吹長屋で、仕立物で生計を立てるが、住人の縁を取り持ったことがきっかけで、結び屋の看板を出すことになった。12歳の幸吉を松井屋に置いて出てきたことに気をもむが、向島の花見で行方不明となった友松という男の子もいた。同じ長屋の貸本をやっている辰平が、縁を求める話を持ってくるのだが、なぜかこの男が気にかかる。「結び屋」としたことでかえって物語を拘束してしまったか、もっと自由な展開を期待したい。★3.2

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