ご近所の職業 記憶の花束 (4)

職業まで覚えているのもおかしいが。

 秋野さんは教師で奥さんはお寿司を作る内職をしていた。早朝からいい匂いが漂うのに引き寄せられて、子供たちが欲しそうに立っていたが、奥さんはもちろん一粒もくれなかった。
 秋野さんは足を骨折して長く臥せっていたのだが、奥さんを叱咤する声がよく聞こえた。

 あっちゃんというひとつ年上の男の子もいて、のちにこの子が校庭で足の爪をはぐ怪我をした。それは夏休みの朝のラジオ体操のときの事故だったので、近所の仲間が保健室までついていった。
 オキシフルで消毒されて、あっちゃんが涙をこぼし足を震わせながらも、一声も発しなかったのを