福知山 小学高学年その3 記憶の花束 (26)

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 この習字の老師一家との付き合いは家族ぐるみのようになった。その書も人格も鷹揚で美しかったし、妻は気安い性質で子供から家庭の情報を聞き出すのが得意だった。
 息子が鹿児島大学に通っていたこともどこか因縁めいていると私には感じられた。ただ習字ということがどうもピンとこなかった(その後60年近く経った今では、かなりピンときているのだが)。

 ひとつショックな出来事があった。そこではドーベルマンを飼っていた。その息子が散歩させていると、突然通りすがりの人を攻撃したという。そこで彼は鎖で犬を殴った。犬は死んでしまったのである。忘れられない。


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