フランス料理屋のビーフストロガノフ

西川美和の「永い言い訳」を読了した。著者は映画監督であるが、小説、エッセイを執筆する等、その活動範囲は広い。本書では、妻の夏子を突然のバス事故で失った人気作家の津村啓が、長年持っていた妻に対する心のしこりを解消し、向き合うまでの過程が描かれる。
 本書の主人公の本名は衣笠幸夫であり、プロ野球選手である広島の衣笠祥雄と同じ発音であることでからかわれることが多かったため、その名前にコンプレックスを持っている。幸夫が津村啓というペンネームの小説家になったのは、名前を変えたいと言う気持ちがあったためかもしれない。
 大学を卒業して出版社に勤務した幸夫は、男妾の様