橋を渡った先にある未来

 吉田修一の「橋を渡る」を読了した。著者は、芥川賞作家であるが、純文学作品のみならず、エンターテインメント系の作品も手掛けている。本書は四部構成で、2014年に報道されたニュースをモチーフとして描かれた前半の3部の先にある、70年後の未来が第4部で描かれる。
 「春―明良」:主人公はビール会社の営業課長の新宮明良。明良の妻歩美は美術ギャラリー経営しているが、二人の間には子供はいない。二人の家には、シンガポールに住んでいる歩美の姉の息子で高校生の孝太郎が下宿している。その歩美のギャラリーに、画家志望の朝比奈達二という男が現れてから、新宮家の未来が暗転する。