「SF」の日記一覧

会員以外にも公開

インカ帝国にとっての新大陸

 ローラン・ビネの「文明交錯」を読了した。著者はフランス在住の小説家であり、デビュー作の「HHhH」でゴンクール賞最優秀新人賞を受賞しており、兵役でスロヴァキアにフランス語教師として赴任した経験を持つ。本書は、鉄、銃、馬、そして病原菌に対する免疫を持っていたインカ帝国の人々が、スペインを初めとするヨーロッパ諸国を征服した世界を描いた歴史改変小説であり、アカデミー・フランセーズ小説大賞受賞作である…

会員以外にも公開

百合とSF

 陸秋槎の「ガーンズバック変換」を読了した。著者は1988年中国の北京生まれのミステリ―作家で、現在は福井県に在住している様である。本書は、著者の初めてのSFの短編集である。なお、本書のあとがきでは、著者自身による執筆の経緯が記載されている。  「サンクチュアリ」:サラ・ジマーは人気ファンタジー作家グリンネルのゴースト・ライターである。彼女は人気シリーズの続編の代作を依頼される。それは、グリン…

会員以外にも公開

完全無欠の自己完結型住居

 周藤蓮の「バイオスフィア不動産-The Inside Stories of Biosphere 3-」を読了した。著者はライトノベル出身の作家で、2016年に「賭博師は祈らない」で第23回電撃小説大賞金賞を受賞して作家デビューしている。本書は、自己完結型の住居「バイオスフィアⅢ型建築」で世界が覆われた未来社会で、クレーム処理を行うアレイとユキオの姿を描いた、ミステリー仕立てのSFの連作短編集で…

会員以外にも公開

最後の神頼み

 アンディ・ウィアーの「プロジェクト・ヘイル・メアリー(上、下)」を読了した。著者はアメリカ在住のSF作家で、自身のウェブサイトで公開した「火星の人」を2011年に電子出版して作家デビューしている。なお、同書はその後「オデッセイ」として映画化されている。本書は著者の第三長編で、地球外生命体アストロファージによる地球生物絶滅の危機を救うために恒星間宇宙船で旅立った主人公を描いたハードSFである。な…

会員以外にも公開

国家権力の象徴

 小川哲の「地図と拳」を読了した。著者はSF、ミステリー作家であり、2015年「ユートロニカのこちら側」で第3回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞して作家デビューしている。本書は2022年第168回直木賞、第13回山田風太郎賞受賞作であり、日露戦争前夜から第二次大戦までの満州の架空の都市の歴史を綴った群像劇で、歴史改変SFの変形と捉えることが出来る。  物語は1989年の夏に日本帝國陸軍の高木…

会員以外にも公開

死亡フラグが立っています

 浅倉秋成の「フラッガーの方程式」を読了した。著者はミステリー作家であり、「ノワール・レヴナント」で2012年第13回講談社BOX新人賞Powersを受賞して作家デビューしている。本書は著者の長編第二作で、思いを寄せる女子高生との仲を進展させようと考え、謎の装置「フラッガーシステム」のデバッグテストを引き受けた、男子高校生の巻き込まれた騒動を描いた、SFともファンタジーともつかないドタバタ喜劇で…

会員以外にも公開

執剣者の選択

 劉慈欣の「三体 3-死神永生-(上、下)」を読了した。著者は中国在住のSF作家であり、2015年に本シリーズの第一作の「三体」で、翻訳書として、またアジア人作家として初めて、世界のSF界で最高のヒューゴー賞を受賞している。本書は「地球往事」三部作の第三部(「三体」三部作ともいう)であり、三体世界との和解と裏切り、三体世界の破滅と太陽系の終焉を描いた長編SF小説である。なお、三体世界とは、三重星…

会員以外にも公開

未来から来た男

 佐々木譲の「図書館の子」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー、歴史小説等、守備範囲は広く、最近は警察小説が多い。本書は著者には珍しく、タイムトラベルを扱ったSFの短編集である。  「遭難者」:1937年の東京、医師の児島志郎は、築地の近くに聳え立つ病院のビルの七階のテラスで、照明弾の様な明るいものが隅田川に落下して行くのを目撃する。その直後、隅田川で救助された裸の男が病院に救急搬送されて…

会員以外にも公開

映画『宇宙戦争 』を観た感想

2005年のトム・クルーズ主演のSF映画。 未知なる乗り物を、 人類が地球に誕生する前から、地球のあちこちの地中に埋めていて、 満を持して、やって来た宇宙人らが、それらに乗り込み、人類に一斉攻撃を仕掛けるという話。 「それにしては、ざっと370万年もの月日があったにも関わらず宇宙人は何故、地球の風土が自分たちに害があるか否かを、事前調査していなかったのか?」 っていう最大のツッコミ所があるも…