連載:宗教

ヨブ記の解釈をめぐって

哲学者の岩田靖夫さんが著された著書のなかに、ヨブ記について触れた文章がある。ヨブ記は旧約聖書のなかにポツンと置かれた不思議な物語だ。

なぜ不思議なのかというと、この書が聖書に置かれた意味がはっきりしないのだ。つまり何を語ろうとしているのか、判然としない。

敬虔な信仰をもつヨブが、まったくとつぜん予期せぬ不幸と災難に見舞われてしまい、家も子供も家畜も財産も失われ、何もなくなってしまう。苦しむヨブに対して友人らは非難し、また最後は神からは叱られて神の前に屈服する、というような物語である。

ユダヤ教のタルムードという書には、ヨブ記には300以上の解釈があ