灘高の生徒は気の毒?

遠藤周作からの引用、もう一つ。
「眠れぬ夜に読む本」より

二年ほど前、NHKから思い出の場所の取材を受けるため、
久しぶりに灘高を訪れたことがある。
授業が終り、生徒たちが教室からぞろぞろ姿をみせた。
3、4人の生徒をつかまえて話しかけてみた。頭のいい返事がかえってきた。
どこを受けるのかと聞いたら、皆、
「東大」
と言下に答えた。
きっとこの生徒たちは、いつかは優秀な官僚や医師や大学教授になるだろうと思った。
だが、一人の小説家も、もう灘高からは出まい、一人のすばらしい画家も、一人の俳優もこの学校から出ないのではないか、という不安に似た感情が私の胸に